襖を開けて、一人の年老いた薬師が顔を覗かせた。
頭髪も髭も真っ白で、目が開いているのか閉じているのか分からない、とにかく頼りなさそうな薬師だった。
その姿を見た吉代は安心したような表情をすると、
「お医者様、この子だよ病人は!
さっきから酷いんだ、この通りね!」
縋る思いで、薬師を梳菜の枕元に座らせた。
「……は、…は……。」
梳菜は青白い顔色と苦しげな息をしたまま薬師を見上げ、頭にかぶっていた頭巾を更に深くかぶった。
薬師は少しの間梳菜の様子をじっと見て、時折吐瀉物を横目で見ながら、無言で考え込んでいるようだった。