手拭いを絞りなおし、再度額に乗せてやろうとすると…


「……おかみ、さ……。」


梳菜が、弱々しい声で吉代を呼んだ。


手を止め、梳菜の口元に耳を近付けると、梳菜は一層弱々しい声で…



「……お医者さまは…要りません……。
わたし、は……行かんと、ならんのです……。」


床(とこ)から離れたいと言った。

当然、それを許すわけにはいかない。


「何言ってるんだい、この子は!!
そんな様で歩けると思うのかい!?
大人しくここにいな!!」

吉代は怒鳴ったが、梳菜の考えは変わらない。
真っ直ぐ、吉代を見つめて哀願する。