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松ぼっくりは、今も梳菜の手の中にあるだろうか。

握って、自分のことを、ちらとでも思いだしてくれているだろうか。

梳菜は、どんな顔をして会いにきてくれるだろうか。


…そして、どんな顔をして、去っていくのだろうか…。



様々な思いを腹の中でかき混ぜながら、萬天は一人、薄明るい明け方の靄の中、一本の木の下に腰を下ろしていた。

今しがた上から落ちてきた松ぼっくりを握りしめ、今か今かと、少女の姿を待つ。

こんな早い時刻に来てくれるとは思えないが、萬天自身が、とても気が急いているらしかった。