「……感謝される喜び、か……。」


萬天が呟いた。


当然、その小声を全て拾える筈もなく、林火は何で御座います、と訊き返した。


呟いたその言葉は、今日萬天が、梳菜から教わったこと。
喜んでもらえるなら、辛い仕事でもやってのける少女の気持ちが、自分には分からなかった。
どうしたら喜んでもらえるのか、それも分からない。

だから、それもまた教えてもらわなくては。



そして萬天は、暗がりに浮かぶ金色の月を見上げて、優しげに呟いた。



「梳菜……、出来ることなら拙は…お主に一番喜んでもらいたい……。」