「……分かるか?林火……。」
また自嘲気味に微笑した萬天は、自身の大きな翼で体を包むように覆うと、そのまま林火に背を向けてしまった。
「拙にとって、我が一族に属し続けることは拷問と同じくらいの苦痛だった……。
だから拙は逃げ出したのだ……。
一族と、同志とは無縁の存在になりたかった……。
……だがどうだ?これまで媚び諂っていた者までも、拙を裏切り者として、こうして見つけては爪を振るってくる……。
一族を棄てても、所詮拙は傲慢で誇り高い天狗共の仲間に過ぎないのだ……。
誰からも必要とされない……。
こうなる運命だと知っていたら、拙は人間となることを願っただろう。」