そこにいたのは、人間ではなかった。


地から浮いた、足すらない体。

揺らめく青い炎。

それは俗にいう、燐火(火の玉)だった。


人の拳ほどの大きさしかない青い火の妖怪。

“つるべ火”という種の、
“林火”と名のつく妖怪は、そんな萬天を蔑んでなどいなかった。


【…どのようなお姿になろうと…どのような罪を背負われようと……、やつがれは主様を見捨ては致しませぬ…。】


「…どんな罪…?
俺が、これ以上どんな罪を犯すという…?

お前は、もう拙を見限って良いのだ!!!」


堪らず、萬天は叫んだ。