「拙を慕うか?
全てを捨て、挙げ句同志を死に追いやるような低俗な男を、お主は慕うと言うのか?」


その声には、自嘲が交えられていた。

当時の情景を懐かしむようにも見え、悔いるようにも見え…。


どちらにしても、萬天は自分の犯した罪を償いきれてはいないようだった。

未だ憂いの残る表情も、それを物語っている。


例えるなら、逃げ出した罪人。


罪に囚われ影に囚われ、晴れることのない気持ち。


萬天はもう二度と会わないと思っていた存在へ、ゆっくり首を回した。