「ん…?」

男はすぐに視線を下ろした。


正面から見ると、より端整な顔付きであることがわかる。

青年と中年の中間と思える顔立ちだ。


そんな綺麗な者とあまり自分の顔を合わせたくないと思った梳菜は、さっと顔を下に向けて、

緊張を押し殺すために両手を強く握り合い、言った。


「…お風邪を…召しますや…。

よろしければ、どうぞ中へ…。
此処よりは、温かいですえ。」



そのどこかずれた話し方に、男は一度首をかしげる。


が、


「いや…拙は此処でいいよ。」


人当たりの良さそうな笑みを浮かべて、梳菜の申し出を断ってしまった。