「…萬天殿…?あなたに、何があったのです…?」


これまで、ひたすらに自分のことばかりを気にかけていて分からなかった。

萬天は、こんなにも胸に蟠(わだかま)りを宿しているということに。
それは夜のように暗く、谷のように深い。

こんなことに、何故今まで気付けなかったのか…。

梳菜は、自分の不甲斐無さを悔やんだ。


「お話しください、萬天殿…!
わたしにお話しなさるだけでも、いくらかお気持ちが晴れましょう…!」


もう薪割りなど考えの外。

梳菜は萬天の羽織りを掴むと、決死の眼差しで彼を見上げた。



自分に救えるなら、救ってあげたい。
瞬時に、そう思ったからだ。