すぐ耳元で聞こえた声に驚きつつ、それが自分のよく知る声だと気付くと、梳菜は自分の目を塞いだ手に優しく触れた。


「驚かせんでくだしゃんせ、萬天殿。」


やはり手の主は萬天。

梳菜に言い当てられたことに満足したのか、あっさり手を離すと、萬天は彼女の握っていた鉈をひょいと取り上げた。


「あ、なにを?」

「ふむ……。」


軽く振ったり、刃をなぞったり。
暫しそれを眺めていたが、ふいに、梳菜の足元に散らばる薪の山が目に止まった。


「それは、お主が任されたのか?」


多少なりと驚いているのだろう。

僅かに目を大きく開いた萬天に無駄な心配をさせまいと、梳菜は出来うる限りの笑顔を見せた。