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「凄い、凄い…っ!
わたしっ、お宿の屋根より高い場所、初めてですや!」
走り過ぎた足を休める意味で、萬天は宿屋から大分離れた仏塔の最上部の屋根に梳菜を下ろした。
屋根には若干の広さがあるとは言え、普通の子供ならば足が竦んで動けないところ。
だが梳菜は大いに喜び、西側を一通り眺めると次は南側、東側と、仏塔から見える絶景に感嘆の声をもらしていた。
それが時折、落ちてしまうのではと危なっかしいときもあったため、萬天は素早く梳菜の腹を捕らえると、あぐらをかいた自身の膝の上に乗せた。
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