「わ、あ……!!」
それは、梳菜がこれまで体験したことのない感覚。
広い町並みを、青く高い空を、萬天はどこまでも軽やかに跳び続けた。
家から家、屋根から屋根。
時には足場の不安定な木の上を跳び、風に乗って町中を縦横無尽に駆けていく萬天。
その姿はまるで、本物の風になったかのようだ。
そして、彼に抱かれる梳菜もまた、頬を撫でる風の心地よさを胸一杯に感じ、
「萬天殿…っ!」
「どうした、梳菜?」
「わたし、今、風神様に、なっとるみたいどす…!」
空に向かって、歓喜の声を響かせた。
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