「ま……、萬天殿……。
な、何が起こったのですえ…?」


梳菜が、萬天の髪の毛に優しく掴まりながら、恐る恐る訊ねる。


「梳菜、目を、開けてもよいぞ。」


言われるままに、梳菜は閉ざしていた瞼をゆっくりと押し開けた。

そして、眼下の景色を見てすぐ、


「ひゃっ!」

「……っと。」


萬天にしがみ付いた。


萬天はなんと、梳菜を抱えたまま、


宿屋の屋根の上に平然と立っていたのだから。