宿屋の入り口のすぐ横の壁にもたれ掛かって、空を見上げている男がいた。


雨が降っているのに傘もささずただ無心に眺めている。


一目見たときは、彼の纏う真っ赤な羽織が強く印象に残った。

紺色の着物を中に着て、履いているのは黒塗りの高下駄。

そして、


「………ぁ…。」


梳菜が思わず見とれるほど、男は美しい顔立ちをしていた。