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あれから萬天は、梳菜に会いによく宿屋を訪ねるようになった。


間近で見たときは梳菜ですら目を見張った、派手な羽織の男。

その羽織を誇りと思うように、萬天はいつもそれを羽織っていた。

人目を引くかと思いきや、周りの人間達はさほど関心を示さなかった。


「すまんが、梳菜はいるか?」


宿屋の女将に訊ねると、


「ああ、またあんたかい。
梳菜なら裏手で紫陽花を手入れしてるよ。」