「お山で……山賊に……っ!」


震える声で、顔を両手で覆いながら、絞り出すように語る梳菜の姿は、途方もない自責の念を含んでいた。

幼い子どもが母親の傍を離れるわけがない。
つまり、その場に梳菜はいた。

……幼い、梳菜は。


「なんで……っ、わたしだけ……!」


何故自分は助かり、母は死なねばならなかったのだろう。

それが、言葉にしなくとも萬天には痛いほど伝わった。


だから少女の小さな背中に手を回し、


「……もう、いい。梳菜……。」


そう言ってやることしか、出来なかった。