「ほら梳菜(くしな)!
いつまで見送りしてんだいっ?

手ぇ足んないんだから、早く手伝っとくれ!」


「あ、へえ、只今…!」


宿の奥から女将の怒号が飛び、梳菜(くしな)と呼ばれたその少女は肩をビクリと揺らした。

踵を返して、中に入ろうとしたその時…。




「………?」



梳菜の目に止まった、一人の人物の姿。



「…何を…?」