雨に濡れた着物と頭巾は、たった今梳菜が自分で着替えてきたところ。


着物は藤色のものから若竹色のものに変えたというのに、頭巾はやはり白いままだ。

…一体、何故部屋の中でも頭巾を被るのかと、理由を知らない萬天は不思議に思った。



「申し訳…ありゃしません…。せっかく…おいでくだすったのに…、あないな惨めな様を晒しまして…。」

「気にせず…。
それより…、何故あんな場所で泣いていたのだ…?

それにお主の瞳…。」


一度に核心を問われ、梳菜は肩を落とした。


…何から説明すればいいのか…

…何なら説明してよいのか…。

それが、梳菜には分からなかった。