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「…わざわざ…お越しいただき…ほんにかたじけなく…存じますや…。」


梳菜の変わった喋り方を聞くのは久しぶりで、萬天はよく顔を見ようと、恭しく頭を下げる梳菜に顔を上げさせた。

…まだ、目元が赤く腫れている…。


「…少し、落ち着いたか?」


梳菜は小さく頷く。


「…貴方様が…わたしをお宿に運んで、くだすったお陰です…。」



…あの後萬天は、腕の中で小さくなってしまった梳菜を抱きかかえると、宿屋の女将に手短にわけを話し、

座敷のひとつ、“冬木の間”にて、ひとまず梳菜の話を聞くことにしたのだ。