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「ほんに、ありがとうござんした…。
またのお越しをお待ちしておりやす…。」
方言とも標準語とも分からない話し方でそう言って、少女はさっきまで宿に止まっていた客を見送った。
雨の中濡れては大変と、番傘を一本持たせて。
齢およそ十二ほどの子供だが、彼女はもう働きに出ていた。
見上げれば、宿屋の二文字が書かれた看板。
少女はこの宿屋で働いている。
作業着らしい藤色の着物を着て頭には白い頭巾を被った、なんとも珍妙な格好。
が、頭巾から覗く顔はとても愛らしく、
そしてどこか、青白くもあった。
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