「……梳菜…?」



その声に誘われるように、萬天は宿屋の裏手に回った。


よく手入れのされた紫陽花や椿の間をすり抜け、ぬかるみが増した地面も気にせず、その先へと急ぐ。



ざっ



「!」



そこにいたのは…、




「ひっ、ぅく…!」




泥の地面に座り込み、降り注ぐ雨を一身に受けながら泣き続ける、


…頭巾を被った少女だった。