懐に何かを大切にしまい、萬天はどこか嬉しそうな表情で、暖簾を押し上げた。



……が。




「…ん…?」


雨音に混じり、聞き覚えのある声が聞こえてきた。

弱々しい、少女の声…。


「…これは…?」



更に耳を澄ませる。




「……ひっ、く、…。」




声は、泣いていた。