【仮に後者を選んでいれば…、萬天様は人間のおなごすら見捨てる臆病者…。

更に天狗との縁も切れ、萬天様は完全なる我らの敵として、殺すつもりだった。】


微かに、林火が震えた。

烏天狗の恐ろしさというものを、林火は長年萬天に仕えたことによってよく知っていたからだ。



【しかし、結果として萬天様は前者を選んだ。

萬天様はおなごを見捨てなかった。
何千何万という妖怪が死ぬやもしれんのに、あの方は目の前の命を見捨てはしなかったのだ。

それでこそ、我らの長となるに相応しくはないか?】


【……ん?するとお前は……。】



林火はようやく気付いた。

つまり邪鏡は萬天を…、