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外は、またも降り止まぬ雨だった。

傘を差す者もおらず、かといって外を出歩く者もない。


そんな中を一人の男が、地面を蹴るようにして歩いていた。


赤い羽織を纏った、赤褐色の肌。

数日前、梳菜が見つけた男…、萬天だ。



この日も、傘はさしていない。



ざり、ざり



「……随分と…遅れてしまったか…。」


残念そうに、困ったように呟いた萬天は、進めていた歩みをある場所でピタリと止めた。



紫色の暖簾を掲げた、小ぢんまりとした宿屋…。


梳菜が働く場所だった。