幻が解け、自分の体を襲っていた痛みもすっかり無くなると、 人々はまず固まった。 自分が何をしていたのか、いまいち分かっていないのだ。 “幻を見せられていたんだよ”と言ったところで、信じる者はいないと思うが。 「…お、おれたち、どうしちまったんだ…?」 「さ、さあ…?」 観衆は口々に何があったのかを囁き合い、 「く、くそ、逃がしてたまるか…っ!」 小窪も、やっと立ち直ったらしかった。