――― 「…………梳菜……。」 萬天の呟きといえば、ほとんどその「梳菜」の二文字だけだった。 刻はもう昼に差し掛かっている。 予想では、このくらいには来る頃かと思ったが、一向に梳菜は現れない。 「……もしや…、いや、まさか……。 ……だが……しかし……。」 刻が過ぎれば過ぎるほど、嫌な予感ばかりが浮かんでくる。 来ないのでは? 約束を忘れてしまった? 自分に、会いたくなくなったのでは? そんな考えばかりが。