「…つ、次は是非、おいでくんしゃいませ…!」



声を、張り上げていた。



雨で周りに人がいなかったのは都合が良かった。

去ろうとしていた男ですら、まさか内気そうな少女がそんなことを言うとは思っておらず、

ほんの少し目を見開いて振り返っていた。



パッと口を押さえて恥ずかしそうにする梳菜の姿に、

男はさっきの人当たりの良い笑顔とは違う、綺麗な微笑みを向けた。



「…“萬天(まんてん)”。

拙は親しい者には、そう呼ばれている。」