紅蓮山と呼ばれる山があった。
どこまでも長く連なっている様が炎の壁のように見えたからそう名付けられたのだと、下の村の者達は言っていたが、
本当はそうじゃない。
此処紅蓮山には、妖怪と呼ばれる者達が棲む。
それは人間に害を成し、時に命を奪う。
全てが人間の敵であるかと言えば、そうではない。
紅蓮山の中心となる三匹の妖怪が、そこに棲んでいた。
それは並みの妖怪と比べずっと強く、ずっと賢く、
そしてずっと美しい。
その妖怪達にちなんで、この山には“紅蓮”という名が付いたのだから。
その妖怪とは、
名に“炎”の字を持つ九尾の妖狐と、
紅い妖傘を持つ刑部狸。
そして、
燃えるような赤い羽織を纏った天狗…
…即ち、拙のことだ。