「つらかったよな…

悲しかったよな…

ごめんな…今まで一人にして…」



抱きしめた千鶴の頭を優しくなでる。



ふいに、千鶴の腕に力がこもった気がした。



「翼は…翼は………

生きて…うっ…いぎで……」



「わかったから…

生きてるよ…翼くんは生きてる…

ずっとお前のそばにいてくれるよ………」



「うっ…うぅ………」



「お前…本当に強いよ。

だから、こんなにも弟のためにがんばれるんだよな」



本当に強い子だ。


俺なんか到底かないっこない。




「でも………翼くんも、休みたいんだよ。

もう…自由にしてやらなきゃいけないだろ…?


なあ…お姉ちゃん」



「うっ…うぇっ………


うわあああぁぁぁーーーー!!!!!」




とうとう、千鶴は泣き出した。


俺の体にすがりつくようにして、子供のようにわんわんと声を上げて泣いた。



ずっと、我慢してたんだろう。


ずっと、泣きたかったんだろう。



でも、それは弟の死を受け入れるのと同じことで、それが嫌で………





俺は千鶴を楽にしてやれたんだろうか?


支えてやれたんだろうか?



俺はそんなことを考えながら、千鶴を抱きしめ続けた。