部屋の中に重い空気が漂う。



さんざん言われたせいか、千鶴も反応を示さなくなった。


俺は、黙って千鶴の言葉を待った。




「…翼とは…約束…したんですよ………」



そして、か細い声で千鶴はぽつりぽつりとつぶやき始めた。



「元気になったら…一緒に遊びに行くって………

翼は…約束を破るような…そんな………ひどい子じゃないです………」



「……………」



「ダメですか………?

鶴、折っちゃダメですか………?

翼の病気…治ります………

きっと…元気になります………」



「千鶴………!」




思わず抱きしめていた。


抱きしめてわかる、千鶴の小ささ。



こんな、こんな小さな女の子が、一人の弟のためにこんなにがんばって…がんばって………




「もういい………

もういいから………

がんばんなくていいんだよ…」




本当に理不尽だと思う。



がんばって、がんばって、これでもかって思うくらいがんばって………



それでもダメだったら、人はどうしたらいいんだ?


千鶴のがんばりは、いったいどうなるんだ?