「千羽じゃ足りません…

たくさん…たくさん折るんです…」



千鶴はまるで、自分に言い聞かせるかのように言葉を繰り返す。


相変わらず、瞳に感情はない。



「千鶴………!」



俺の千鶴の肩においた手に力がこもる。


それなのに、千鶴の表情に変化はなかった。


たまらず、俺は歯を食いしばり、そして千鶴に語りかける。



「千鶴…いいか?

お前の弟は…翼くんはな、死んだんだ」



その言葉に、初めて千鶴はまともな反応を見せる。


ピクリと肩が揺れた。



「もういないんだよ…

お前の大好きな弟は死んだから…

もう………いない」



千鶴に言い聞かせるように、何度も何度も繰り返す。


千鶴はその言葉に時折反応を見せた。



「……何を…言ってるんですか?」



「え………?」



千鶴が、俺の言葉に言葉で返す。


ただ、千鶴の視線は虚空を漂ったままだった。



「翼は…生きてますよ…?

毎日…鶴を折ってるんです………

死ぬはず……ないじゃないですか………」




千鶴の言葉に、俺は返す言葉が無くなってしまった。