「あの子…千鶴は翼の死を受け入れられてない。

あの日以来、部屋にこもりっきり。

私も夫も、正直どうしたらいいのかわからないの」



あの日以来…つまり、一週間は部屋にこもっているわけだ。


やはり、千鶴はまともな食事も睡眠もとれていないらしい。


ある程度予想はしていたが、実際に聞かされると何とも言えなくなってしまう。




「あなたは…それでも会いたい?

あなたにとって千鶴はただの後輩の女の子なんでしょう?

あなたは何でそこまでして千鶴の力になりたいって思うの?」



拳をつくる力がグッと増す。



何故?


何故、俺が千鶴のためにここまでするのか?



そんなの、簡単だ。




「あいつの泣き顔を見たからです」



「泣き顔…?」



「俺、あいつには笑顔が一番似合ってると思うんです。

それは、お母さんもわかるでしょう?」



「………ええ」



「だから、あいつには笑っていてほしい。

それだけですよ。

俺はあいつの笑顔が見たいだけなんです」




千鶴の笑顔。


見るもの全てを元気にしてくれる魔法のようなもの。



その笑顔を、俺は守りたい。




「俺は千鶴に会いたい。

お願いします。

千鶴に会わせてください」