「その………

私…泳げないってのが、本当に恥ずかしくて…

ちょっと惨めになったっていうか…イライラしたっていうか………」



そう、ぎこちなく言う美波を見て思った。



ああ、こいつも同じなんだ。


雨宮が言っていたこと。



できること、望むこと。



それが釣り合ってくれないことが苦しかったんだ。



みんなのように泳ぎたい、でも、泳げない


それで、美波はそんな自分を誰にも見せたくなかった。


恥ずかしくて見せたくなかった。




「………はぁ」




兄妹そろって馬鹿だと思う。




「お前さ、泳げないことのいったい何が恥ずかしいんだよ?」



「え…?

だ、だから高校生にもなって泳げないだなんて………」



「それは恥ずべきことなのか?」



「えっ…と……」




美波は言葉に詰まった。


こいつもわかっているんだろう。



それは、恥ずかしいことなんかじゃない、ということを。