雨宮は、今度は俺の方を向き、そして…笑って言った。



「いいじゃん。

そう、思うだけでさ」



微笑む雨宮の顔があまりに眩しくて、俺は思わず目を背けそうになった。



雨宮はというと、体育座りのまま、顔をうつむかせた。



「結局、人間ってちっぽけな生き物なんだよね…


知ってる?

人間ってね、自分の全てをかけたとしても、人一人を救えるかどうかの力しかないんだって」




人間は非力だ。


人間はちっぽけだ。



そう言う雨宮に、俺は言葉を返せずにいた。




ほんと、雨宮の言うとおりなのかもしれない。


人間は弱い。


弱いから悩む。


弱いから苦しむ。



かくいう俺もそうだ。



だから、俺はこんなにも悩み、苦しんでいる。




「できること、望むこと。

それは絶対、同じ数じゃないんだよ。


そして…もちろん、できることと、自分が今望んでいること、その選択を間違うこともある。



今、高橋くんは、美波を守ってやりたかった、って言うけどさ、望むことが必ずしもできるわけないじゃん。



だからさ、できなくてもいいんじゃないかな?」