「ただいまー…って、もう寝てるか」
シンと静まり返った真っ暗な廊下。
リビングの電気が漏れていないということは、みんな寝静まっているのだろう。
極力音を立てないよう、抜き足差し足で階段を上がる。
私の部屋は2階。
ちなみに、この年になっても未だ二段ベッドを使っている。
家族が多いから我儘は言えないけれど、遅くに帰ると同じ部屋の愛梨に気を使わなければならないのが面倒だった。
──キィ……
そっとドアノブを捻ると、案の定部屋は真っ暗で。
眠っているだろう愛梨を起こさぬよう、そっとドアを閉めた、その時。
──グイッ!
「…っ!?」
突如掴まれた腕。
悲鳴をあげようと、息を吸い込む。
「やだ。私だよ、私」