「落ち着いた?」
「…はい」
すっかり泣き腫らして真っ赤になった目を隠すように、俯きがちに小さく頷く。
志季はそっと私の背中から手を離すと、最後にポン、頭に手を乗せた。
「…なんつーか、さ。頑張りすぎんなよ」
「え…?」
「長女だからとか責任感じてンだろうけど、全部一人で背負い込もうとすんな。妹たちも少しは頼ってやれよ」
「……」
そうだ。
私は今まで、小さな妹や弟たちに負担をかけまいと、出来るだけ一人で消化しようとしてきた。
今回の事だってそう。
愛梨や健太、友也に、もっと早く相談するべきだったんだ。
ううん──
それ以前に。
お父さんと、ちゃんと向き合っていれば。
浮気疑惑を耳にしてから、私はなんとなくお父さんを避けていたんだ。
裏切られるかもしれないという恐怖から、心が勝手に拒絶していたのかもしれない。