「ただいまー」



幸せの余韻を残し、鼻唄交じりに玄関を開けると。



「…あれ?」


何やら見慣れない靴が、綺麗に揃えられていた。


こんな高いヒール…愛梨が履くわけないだろうし。


一体、誰?

お客さん?


不思議に思いながらも、ほんのり明かりの漏れているリビングに向かおうとした時だった。



グイッ。

ふいに腕を捕まれて。


ギョッとして振り返れば、シーッと唇に人差し指を当てて、舞が私を見上げている。

あ、舞っていうのは相澤家の末っ子で、小学2年生の妹なんだけど。


「どうしたの?舞」


そう小声で問いかけながら、膝をついて舞の視線に合わせる。