「ただいま~」
「お邪魔します」

誰もいない広い玄関に響く二人の声。
俺は、魁李が一瞬淋しい顔をした気がした。

「‥今日も親いねーの??」
「あ、うん。仕事」

俺はそっか。とだけ言って魁李の家に上がった。
階段を上がって誰もいない魁李の部屋に入り、スクバをドサッと置いた。

「で?なんで悩んでんの??」

魁李が俺に唐突に聞いてきた。
俺は窓に寄っかかって口を開く。

「そんなにこの年になると恋人って必要かな??」

んーっと魁李が俺の横に座る。

「でも中1ん時は付き合ってたじゃん」
「付き合った‥って大町 奏人(だいちょう かなと)と‥」

二人共、今の状況に気づいたのか、同時に頬を真っ赤に染めた。

「お前‥だけだよ。」

俺と魁李は1年の時に一時期付き合っていた事がある。
告白は魁李から。
俺も同時は魁李の事が好きだった。
でもあるキッカケで別れたんだ。
きっとそれがなかったら俺と魁李は今でも付き合っていただろう。

「何、意識してんだよっ」

頬を赤くしてうつむく俺に喝を入れる魁李。
‥んな事言ったって魁李だって顔真っ赤じゃんか。
そう思った。
少し間があいて、気を取り戻した魁李は俺に聞いてきた。

「じゃあ、お前は彼氏が欲しいわけ?」
「欲しいとかじゃなくて、出来ないの!!好きな人とかさ」

魁李は俺の頭に手を置いて微笑んだ。

「いいんじゃん?自分の好きで」

魁李は昔っから優しい。
あの時もずっとー‥