「……そろそろ帰ろう」


気持ちが落ち着いた時には 部屋に西日が差し込んでいた時間だった。

マンションを出て、車で帰る。

昼間と違い、ゆっくりと帰った。

バラードの曲が、また私を落ち着かせる。

お互いに何も話すことはなかった。



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「今日は、色々とありがとうございます。」

ゆっくり帰ったせいか、家に着いた頃には夜になってた。

「こっちこそありがとう。でも、急に誘って悪かった」

車のエンジンを止めたせいか、車内は静かで、また鼓動が早くなった。


「ワンピースも…ありがとう。」

「どういたしまして。」



「じ、じゃ…、私帰ります」

沈黙に堪えられなくなり、帰ろうとドアに手を延ばした………とき…

“えっ…?!”


ドアに延ばした手を捕まれ、後ろから私は 健吾に抱きしめられていた。


「…また今度、デートしてくれる……?」


健吾の柔らかい髪があたる。タバコの香りも感じる… 健吾の唇が私の耳にあたりそうで、息遣いも聞こえる。

ドキドキが収まらない私は、黙って頷くだけしかできなかった……