「…いないもん、彼氏…」

ボソっと言った。

「あ…えっと、ごめん。いると思ったから…」

「………」

「………」

私達は下を向いたまま
何を話そうか考えてるかんじがした。

「…一つ聞いても良いですか?」

「ん?何?」

さっき、平井さんが話してて気になったこと…。

「山川さんは、カメラを辞めた、って……」

「………」

健吾の顔の表情が 暗く変わった。

「仕事も、カメラも、恋人も全部捨てた、って…」

「平井さんか―――。」
「でも、またカメラを始めたのはどうしてですか?」

「………」

また健吾の表情は変わった…。

「あ…、ごめんなさい。今の聞かなかった事にしてください。」

「いいんだよ。いつかミキに聞いてもらいたかった話しだから…。今度でいいかな…?」

本当は話したくないと思う…。

それでも健吾は私に笑顔を見せる。

そんな彼が健気に思えた。