「詳しい話しは聞かなかったけど、2月頃 私の所に来たんだよ。」

「仕事もカメラも、恋人も捨てた、と言ってた…」

「………」

恋人――――、

いたんだ……。

「ここに来てから ずっとカメラを持つことも無かったんだけど…」

「ある日突然、アイツの久々な笑顔を見たんだ。“撮ってみたいコがいた”、“またカメラを始めたい”って夜まで言ってたなぁ…。」

目の前の写真を見ながら、平井さんはその日の事を思い出してる様子だ。

「そのコって、ミキちゃんの事だよ…。」

「えっ、私…?」

平井さんは柔らかい笑顔で私の顔を見てる…。

胸の中がドキドキしてる。

私は思い切り平井さんの視線を外した。

「今アイツは、前に進もうと、考えて考えて悩んでると思う。健吾の事よろしくお願いします。」

と、静かに頭を下げた。