「しつこいかもしれないけど、協力してくれないかな?」

今度は強引じゃなく、優しく頼んできた。

「どうして、私ですか?他に沢山可愛い人や綺麗な人がいますよ?」

「初めて会った時から、君を写したいって思った。」

「初めて会った…とき…?」

「あの桜の木の下で会ったときだよ…」

一瞬で 私の心の中は波を打ってきた。

「君は気付いてなかったけど、俺、30分くらい前からあの学校にいて、桜を見てる君を見てたんだ…。」

真っ直ぐな目で私を見る健吾。

「満開の桜を見上げていた君をずっと見てた。そして思わずシャッターを押したんだ。」

「どうしてですか…?」

健吾を見て 静かに聞いてみた。

「…君が、泣きそうだったから…。あの時、風で舞った桜の花に君がさらわれてしまうんじゃないかと思ったんだ。」