呼び止めたけれど…


何を話していいかわからず、頭の中は真っ白。


先生はどんな気持ちで私を見てるのだろう。


隣にいる健吾も、どんな気持ちでいるのだろう。


私、健吾がいるのを分かってて先生を呼び止めた。
今になって後悔し始めてきた。


「あのっ…」


思い切って話しをしようと、言葉が出かかったと同時だった。
私の声を掻き消すように知らない女性が誰かの名前をよんだ。


「亨さん、やっと見つけた!」


どこかで聞いたことのある名前。

それに気付く前に女性は普通に先生の隣に来て、

自然に先生の腕に絡みついてた。


あぁ、そうだった。

先生の名前“亨”って言ったんだっけ。


私は一度も言うことが許されなかったことだったから忘れてたよ…。


いつも私は“先生”って呼ぶだけだったから。


高校生の私にもすぐ気付いた。


この女性(ヒト)が先生の恋人なんだと……。