この人混みの中、健吾を捜すのは難しい。


こう言う時、携帯が役に立つんだけど…、


健吾は携帯を持ってない。


「もう少しで花火が始まるよぅ」


「ミキちゃん、あれ健吾さんじゃない?」


健吾に負けないくらい長身の俊君が私に教えてくれた。


あっ、あの後ろ姿は…


「健吾ーっ!」


私の呼び声に振り向いたのは健吾だった。


「ミキっ」


お互いに歩み寄り、どんどん健吾が近くまで来る。

人混みの中、何度もぶつかりながら歩いた。


あと少しで健吾に会えるところで、誰かの肩とぶつかりバランスを崩して倒れてしまった。


“痛〜い…”


「すみません、大丈夫ですか?」


お尻を打った私に手を差し延べて来た人の顔を見た。


「私は大丈夫で……す」


『あっ…』


お互い顔を見合った瞬間同時に声が揃った。


だって、目の前に居る人は…


「先生…?」


「ミ…キ…?」


お互い驚いて言葉が出ない。


目の前に居る人は、本物の先生?