「加奈ちゃん、1人でよく来たね。おじいちゃんね、今畑に行ってるから上がって待ちなさい。」


おばあちゃんが玄関まで顔を出してくれた。今年はお正月はお父さんの事で来られなかったから、何だか久しぶりに来たような感じだった。



部屋に上がるとおばあちゃんちの匂いがする。昔からこの匂いが大好きだった。古い平屋の家。太くて立派な柱に、畳みの部屋しかないこの家はタイムスリップしたみたいに、おもむきのある家だ。


部屋の隅には昔と変わらない、あの古時計がかけてある。


昔と変わったのは、今は壊れて動かない事くらいだろう。