「達哉くんと上手くいかなかったのは、瑞希の彼氏のせいなのか?」
「せい、じゃないよ。私は翔が好きなの…。達哉さんとは縁が無かったんだよ。」
「だが二人でデートしているところに乗り込んで来たんだろう?」
「…まあ…そうだけど…。」
パパは深いため息をついた。
何を言われるのか怖くて、私は怯えていた。
「…別れなさい。」
「…えっ?」
パパは厳しい顔つきで私を見ている。
「そんな非常識な男との交際は認めない!」
「パパ!翔は非常識じゃないよ。すごく頭もいいし…。」
「頭がいいか悪いかは問題じゃない。とにかく、すぐに別れなさい!」
「いやっ!絶対別れないんだから!」
私はパパの言葉も無視して、部屋に戻った。
そしてベッドに倒れこむ。
「何よ…。翔に会ったことも無いくせに!」
その日、私は人間ってこんなに涙が出るんだ…と感心するくらい泣いていた。
パパは決して私の部屋には来なかった…。
「翔、おはよう…。」
次の日の朝、私はいつもの曲がり角で翔を待っていた。
昨日のことをどうしても引きずってしまう。私が元気無いことに翔も気付いて、心配してくれた。
「瑞希、なんかあった?」
「…翔…っ。」
昨日あれだけ泣いたのに、私の目からはボロボロ涙が溢れて来る。
突然泣き出す私に、翔は慌てていた。
「瑞希?」
「翔…私…別れたくないぃ…。」
「何言ってるんだ?」
私は昨日パパに言われたことを克明に翔に話した。
翔は渋い顔で私の話を聞いていた。
「そうか…。まあ、確かにあれは非常識と取られても仕方がない。」
「じゃあどうするの?パパ、すごく怒ってるよ。」
「…瑞希。」
翔は私にハンカチを差し出して、きっぱりと言った。
「瑞希のお父さんに会わせてくれないか。」
私はびっくりして、涙を拭く手も止めて翔を見た。
「何言ってるの?パパ、私のこと大好きだから、翔に会ったら殴ったりするかもよ?」
「それでも…。瑞希との付き合い、認めてもらわないと。」
「翔…!」
翔の決意がそこまで固いなんて、思ってもみなかった。
パパが翔との付き合いに反対しているのも忘れて、つい顔がにやけてしまう。
なんか…嬉しいな。
翔が真剣にパパと向き合ってくれること。
私はにこっと微笑んで、翔に向かって大きく頷いた。
「じゃあ今日帰ったら、パパに話してみる!」
「…ああ。」
すっかり話し込んでたから、遅刻しそうだった。
私と翔は顔を見合わせて笑って、走って学校に向かった。
放課後、翔との待ち合わせ場所の曲がり角に向かう途中で、翔を発見した。
翔は相変わらず参考書を読みながら歩いてる。
「翔!」
私は翔の元へ駆け出した。
翔は参考書を読んでいて気付かない。