もうすぐバレンタイン。
私は毎年翔にチョコレートを作っている。
ああ見えて甘党な翔には、とびきり甘いチョコをあげる。
今年は何作ろうかな。
「翔、お疲れ様!」
いつもの曲がり角で翔を待つ。
翔の姿が見えたら、反射的に翔に向かって叫んじゃう。
これが愛の力かな。
「瑞希。」
翔は参考書を読むのをやめて、私の元へ歩いて来る。
クリスマスには色々あったけど…私達は上手くやっている。
達哉さんとは今メール交換している。
なんでも、大学に好きな人が出来たんだって。
私は翔と歩きながら、学校のこととか、達哉さんのこととか、色んなことを話す。
下校は大切なデートだもんね。
「あ、そうだ。翔、今年はどんなチョコレートがいいかな?」
毎年翔はこんなのがいい、とか言ってくれるから作り甲斐がある。
翔は少し悩んで、頷いた。
「今年は…チョコはいいよ。」
「…えっ?」
「瑞希、大変だろ。別に無理して作らなくていいから。」
「何言ってるのっ!年に一度のバレンタインだよ?絶対チョコ作って、翔に美味しいって言ってもらうんだから!」
「いや、本当に…。」
「もうっ!翔がなんと言おうと絶対作る!」
私はふんっ、とそっぽ向いた。
翔は困ったように何も言わない。
何よ、別に大変とかそんなの気にする必要無いのに。
大体、たとえ大変でも翔が「美味しい」って言ってくれたら苦労もふっとぶのに!
翔は乙女心をちっともわかってないわ。