『……あれ、母親なんだ………。』





無表情なメガネがポツリと言った。





『……………??』




『あれは僕の母親なんだよ。』





最初は何のことだかさっぱり分からなかった。





(何言ってるんだろこの人。頭おかしいのかな??)





本気でそう思った。




……沈黙が続いた。




『僕のいわゆる継母なんだ。

小さい頃から虐待を受けててね………。
性的虐待っていうのかな………。


……………そんな僕が心療内科医になってるんだから、おかしなものだろ…。』




そう言って無表情なメガネは本当に無表情になった…………気が、した。





アタシは何も言えなかった。




何も言ってはいけない気がした。





その時かもしれない………。




初めて人とちゃんと向かい合って、相手を傷つけてしまうことの怖さを知ったのは………。






自分を傷つけるよりも、何倍も何倍も心が痛かった。