「愛穂、着いたよ」

肩をかるく揺すられて、目を開けた。そこは見慣れた近所のコンビニの駐車場だった。助手席で、眠ってしまったらしい。

「ねぇ、この先、通り抜け出来ませんって看板途中にあった?」

「どうだろう・・・なかったと思うけど。途中工事中の道も無かったし、いつもと同じようにここまで走ってきたけど?」

「やっぱり、夢・・・かぁ」

愛穂は、小さくため息を漏らした。

「今夜は暖かくして、ゆっくり休んでさ、風邪を早く治してくれよ!」

この人、結構優しいし、結婚してもそれなりに幸せにやっていけるのかなぁ・・・。

「うん、ありがとう。今夜はゆっくり寝かせてもらいます、本当にゴメンネ」
「じゃぁ、今度会う時には、渡すものを用意して置くからね!」

それって、婚約指輪?私はこのまま、あなたのお嫁さんになるの?
「調子よくなったら、連絡するね・・・」

直也の目を見ずに、車を降り軽く手を上げて見送った。
今夜は余計な事を考えずに、ぐっすり眠ろう。

直也との結婚に、特に不満があるわけじゃない、ただなんとなくこのまま結婚しちゃ不味いような、抵抗したいような気持ちが心の奥底にあるのは確かだった。