それで、直也の気持ちの整理がされて余計なストレスを溜めずに済むなら、わざわざ愛穂の意見を云って、事をややこしくする事もない。

でも、それっていうのは、二人の意見の違いの現れで、実は二人は価値観や感覚のギャップなのだとしたら。

このまま二人が家庭を持ってしまって大丈夫なのかしら?

意見や価値観の違いが表面化して、些細なことで言い争いになったり、喧嘩になったりするんじゃないか?

愛穂は、直也の話しに肯きながら、胸の中ではそんな不安に襲われていた。

「ねぇ、愛穂は子供は何人欲しい?」
直也が突然、尋ねた。

「わたしは・・・どうだろう・・・」

二人の結婚を前提としたような口ぶりの質問に、正直いって戸惑った。

「こういうご時勢だからなぁ、多くてもせいぜい二人だよな。出来れば男と女一人ずつって、そんな上手くは行かないか・・・」

直也は何時になく機嫌良さそうな心地で、近未来のアットホームな一家団欒の画を見つめるような目をして微笑んでいる。

「来月会う時に、俺の実家へ一緒に行ってくれるかなぁ?」

私は、直也のプロポーズを受けてはいない筈だ。しかし彼の中では、もう120%二人は家庭を持っている。

今まで私は、彼氏という目線で彼を見て来た。そして、プロポーズを受けて以来、旦那、主人、生まれてくる子供の父親、人生のパートナーという目線で彼を見始めた。